「せどり」は裁定か?-経済学的に見た商売の原則

裁定

投稿日: 2014年02月03日

最終更新日: 2017年02月07日

インターネットは買い物を楽にした

一昔前は「買い物」といえばスーパーやディスカウントストア、デパートなどに直接出向いて行うことが一般的でしたが、近年のインターネットの普及によりネット売買が盛んになり、消費者にとってもありがたい状況になっています。

大手ネット通販サイトを見ると、本当に多種多様な製品が安価で売られており、それを実際使った人の感想などもすぐに調べられるため、重宝しますよね。

また、価格差があるものの中から一番安いものを探すことも可能で、以前のようにチラシを集めたり何件もお店を回ったりする必要も無くなりました。

今回は、インターネットを使った商品売買と裁定取引の関係について考えてみたいと思います。せどりを例にとり、どのような行為が行われているのかを見ながら理解を深めていきたいと思います。

「せどり」って知ってます?

古書店で山ほど古本を買っている人、見たことありませんか?

ダンボールで2箱も3箱も買っていて、「こんなにたくさん買って、いつ読むの?」と聞きたくなります。

しかし、あれは読むために買っているのではなく、売るために買っているのです。

古本は裁定取引が働きやすい商品の1つです。欲しい人にとってはいくら出しても欲しいが、欲しくない人にとってはタダ同然の価値しかない、という書籍も多く存在し、商売の基本である「安く買って高く売る」ということが実現できる可能性が高い商品であるということもできます。

売る側もIT技術の恩恵を受けている

せどりで稼いでいる人の多くは、インターネットを利用して価格調査・商品販売を行っています。

本のタイトルや製造番号、バーコードなどの情報から、「今その本がいくらで取引されているか」を瞬時に調べ、相場価格より安く店頭に並んでいるものを片っ端から買っていくのです。今では価格調査アプリなるものも登場しています。

そうして安く仕入れた古本の山を持ち帰り、ネットオークションやストア出品して陳列し、落札または購入されるのを待ちます。

その本が欲しい人にとっては、定価より安い価格で手に入るだけでなく、自分で古書店に行って探す手間も省けます。インターネットでの買い物であれば、それこそ数分で買い物を済ませることができ、数日後に宅配までしてくれます。

安く仕入れたからといって絶対に儲かる訳ではない

このように、みんなが得するように見える「せどり」ですが、取引コストを考えると損をする事もあります。

今回の例で考えられる取引コストは、古書店に行く手間、価格を調べる手間、書籍を探す手間、購入した古書を持ち帰る手間、ネット上のストアを維持管理する手数料と手間、梱包など、様々なものが考えられます。また、その本が確実に売れるという保証も無く、売れなければ仕入れ価格は自分が負担しなければならないというリスクもあります。

これらの手間やリスク、手数料を「仕入と売上の価格差」でカバーすることができなければ、本質的な意味で「儲かった」ことにはなりません。

しかしインターネットの普及により、これらの取引コストは大幅に圧縮されたことは間違いないでしょう。ネット売買が普及しなければ、とても間口の狭いビジネスと言えるかもしれません。

definition
裁定取引を行う場合、取引コストを考慮しないと、損をしてしまう事もある。

裁定のチャンスはあるか?

同じ時点で異なる価格で売られており、それが自分にも仕入・販売可能で、仕入と売上の価格差で取引コストをカバーすることができる、という条件を満たす場合、誰にでも裁定取引に参入することが可能となります。

古本に限らず、他にもこのような裁定が当てはまる商品の場合、同じような方法でビジネスとして確立できる可能性は十分にあります。

インターネットの売買って、それほどすごいパワーを秘めているのですね。

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条件さえ満たせば、どんな商品でも裁定が働く。
安く買って高く売ることができれば、確実に儲けることができる。

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