国債を大量に発行すると景気が悪くなる?-国債発行とその影響

預貯金や金融

投稿日: 2014年01月29日

最終更新日: 2017年02月07日

国債ってなんだ?

そもそも国債とは、国が発行する債券のことで、購入した人はいわば国に一定期間お金を貸している状態になるということができます。

ただ貸すのではなく、一定期間貸すのでそれなりに色を付けて返してもらいたいと考えるのが普通ですよね。

ですから、国債も満期を迎えれば、貸した金額よりちょっと多く返ってきます。例えば10万円を10年貸して、10年後に12万円で返してもらう、といった具合です。

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国債とは国が発行する債券で、数年間国にお金を貸すことで、利子を付けて数年後に返してもらえる仕組み。
種類や発行の理由も様々で、一般人も購入することができる。

発行している主体が国ですから、返してもらえる可能性はとても高いです。タンスに10万円を10年間入れておいても、つくのは利息ではなくホコリだけ。寝かせておいても何の得もありませんから、国債を買って国にお金を貸し、利息をもらった方が良いと考える人は多いです。しかもその返済がほぼ確実だと考えるならばなおさらです。

今回は、この「国債」を国が大量に発行すると、どのような影響が出るのかについて考えてみたいと思います。

大量に発行すると国債の値段が下がる

まず、国債に限らず「モノ」がたくさんあると「価格」が下がります。ダイアモンドはちょっとしかないのに欲しい人が多いから高いですよね。反対に、その辺に転がっている石ころは、たくさんあるけど欲しい人がいないから無価値で、誰もお金を払ってまで手に入れようとしません。

国債も、ちょっとしかない場合は国が定めた金額で購入するしかありませんが、大量に発行されてしまうと欲しい人の数より発行数が上回ってしまい、売れ残りが発生してしまいます。

そうなると、値引きして売るしかならなくなってしまいます。10万円だと売れ残ってしまうから、9万円で売る、といった具合です。もちろん、どちらの金額で買っても満期を迎えたときにもらえる金額は変わりません。

となると、国債の利回りが予め定められた利率より上昇する事になります。例えば満期を迎えたときにもらえる金額が12万円だとすると、10万円で買った時は2万円、9万円で買ったときには3万円得する事になります。この得する金額のことを、利回りと言います。

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国債は大量に発行すると値段が下がり、値段が下がると利回りが上がる。
10万円で買うより9万円で買った方が利回りが高い。

銀行の貸し出し金利が上昇する

銀行の(長期)貸し出し金利は国債の利回りを基準に設定されています。

上記のように、国債を大量に発行し、その利回りが上昇してしまうと、銀行の貸し出し金利も上昇してしまいます。

銀行の貸し出し金利が上昇すると、銀行からお金を借りたい会社が借りにくくなってしまい、思い切った経営ができなくなったり、たくさんモノを作ったり売ったりすることができなくなってしまう可能性があります。

困るのは会社だけではありません。個人も銀行からお金を借りにくくなります。車や家を買うときのローンにも影響します。ローンはいわば借金で、貸し出し金利が高いときにローンを組むと、低いときに比べて多くの金額を支払わなければならなくなるため、購入することを控える人が続出してしまいます。

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国債の利回りが上がると銀行の貸し出し金利が上昇し、会社や個人がお金を借りにくくなってしまう。

景気が冷え込む

会社が銀行からお金を借りにくくなるということは、思い切った経営判断をしにくくなり、売上を伸ばすのが難しくなってしまうということです。そうなると働いている従業員たちの給料は減り、家計を圧迫し、モノが売れにくくなってしまいます。

モノが売れにくくなってしまうと、モノを値引きして売らなければならなくなり、さらにそのモノを作っている会社の売上を下げてしまいます。いわゆる不景気になってしまうということです。

もちろん個人もローンを組みにくくなってしまいますから、車や家などの高価なものを買いにくくなり、それらを販売している会社の売上も落ち込む事になってしまいます。

円高が進む

日本の国債の利回りが上がると、海外の投資家たちも日本の国債を手に入れたいと思うようになります。

また、日本の投資家たちも、外貨建て資産を日本国債に切り替えたいと思うようになります。

すると、「外貨を売って円を買い、日本国債を買う」、という行動に出るようになります。外貨を売って円を買うということをたくさんの人がすると、円の価値が上がっていき、円高を招きます。

株安が進む

投資家たちはリスクとリターンを考えながら資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を組み立てますが、国債という安全度の高い(リスクの低い)投資物件の利回りが上昇すると、株というリスクの高いものから国債に切り替えたいと思うようになります。

同じ利回りなら、誰でもリスクを嫌いますからね。確実に12万円もらえるものと、もしかしたら10万円しかもらえないものが、同じ金額で売っていたら、誰でも確実に12万円もらえるものを欲しがるはずです。

そういう理由で株から国債に切り替える投資家が続出し、株の人気が薄れ、株安になっていきます。

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このように、国債を大量に発行すると、様々な影響が起こります。ですから、政府は慎重に国債を発行しようとしているのですね。

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