ポイント還元の仕組みと秘密-ロックイン戦略
投稿日: 2014年01月14日
最終更新日: 2017年02月07日
ポイント制度は企業が仕組む巧妙なロックイン戦略
皆さんは、「ポイント」と聞くと、どういう印象をお持ちでしょうか。
多くの方が、「店からのサービス」と捉えているのではないでしょうか。例えば
「買ってくれたお礼」
「他には無いサービス」
「親切な店」
などなど。しかし、ポイントサービスは店からのオマケ的存在ではなく、計算された戦略のもとに存在するシステムなのです。
ポイントサービスは、付与したポイントの分、次回の買い物の際に値引きしてもらえるというものが一般的です。単純に考えれば企業の儲けを減らし顧客の財布はあったまる、とても良いシステムに見えます。しかし実際はどうなのでしょうか。
今回は、経済学でいう「ロックイン戦略」とポイントサービスシステムについてご紹介していきたいと思います。
ロックイン戦略とはどのようなものか
ロックは鍵、インは中に入れるまたは閉じ込めると言う意味。
すなわちロックインは、顧客に鍵をかけて出られないよう閉じ込める戦略のことである。
顧客は知らず知らずのうちに企業に閉じ込められてしまい、まるで目に見えない鎖に繋がれているようにその企業の店やサービスを利用させられてしまう。
つまり、ポイントサービスこそロックイン戦略の典型的な手法であるということができます。
「単なる店からのサービス」と捉えるのではなく、「顧客をつなぎ止めておくための戦略」と考えることで、より冷静にポイントサービスを活用することができるようになると思われます。
いつの間にかロックインされている?
日常生活でよくある「会員登録」というシステムで、入会特典として一定のポイントが無料で付与される事があります。すると人は
「せっかくポイントをもらったのだから、この店で買い物をしよう」
「無料で割引が受けられるのはお得だ」
と考え、その店のお客さんとなります。買ったものの金額に応じてさらにポイントが付与され、次回買い物をする際にもポイント割引が受けられることがほとんどで、ポイントを持っている人は
「このお店のポイントがあるから、次回もこのお店で買うことにしよう」
と、その店の常連さんになっていきます。まさにそのお店にロックインされた状態という訳です。
このシステムはポイント還元だけにとどまらず、スタンプカード(スタンプを一定数集めると商品券などと交換することができる仕組み)などにも当てはまります。
企業からしたらポイント分割引したり商品券を配布したりするのは明らかに損ですが、そこは「損して得とれ」ということです。一見損に見えますが、ポイントを付与するだけでお客さんから利用してもらえ、常連さんになってもらうことができるのであれば、安い出費なのです。
ポイントサービスやスタンプカードは、売上をあげるために支払う費用とも考えることができますね。
ポイントサービスと値引きの違い
さて、ここからはポイントサービスと値引きの違いについて考えてみたいと思います。
「ポイントサービスと値引きは、大して変わらない」と考えている人も多く、そのような人はまんまと企業の戦略に乗ってしまい、企業にとってありがたいお客様となってしまっています。
賢い消費者を目指し、今こそ冷静に両者(ポイントサービスと値引き)の違いを理解していただければと思います。
その場限りかそうじゃないか
ポイントサービスは「次回以降から有効」であるのに対し、値引きは「その場限りでの値引き」という違いがあります。
ロックイン戦略をしたい企業にとっては、せっかくサービスするのだから次回につなげたいと思うはずです。その場限りでお客さんを手放したくない。だから、値引きよりポイントを付与したがります。
「値引きしてくれる良心的なお店」という記憶はすぐに忘れ去られてしまいますが、「○○pt利用可能」と書かれたポイントカードは現物として財布の中に残ります。
記憶より現物を残した方が、失念される可能性も低いという訳です。
割引率による違い
値引きはポイントサービスより割引率が大きくなります。つまり値引きはポイントサービスよりお得だということができます。
例えば1,000円のものを買って、600円割引してもらえるのか、600pt付与してもらえるのかの違いを考えてみましょう。
値引きの場合、1,000円のものが400円で買えるようになるので、割引率は60%という事になります。
1,000円分買って600pt付与してもらえる場合、最初に買った1,000円はそのまま現金で支払い、次回の来店の際、さらに600円分何かを購入しなければならないということになるので、ここでは合計1,600円の買い物をするとします。すると商品代金の合計は1,600円、割引してくれたのは600円ですから、600÷1,600=0.375→37.5%の割り引きを受けたという事になります。
多くの人は、600円の値引きと600ポイントの付与を同等に考えてしまいがちですが、値引きとポイントにはこれほど大きな差があるのですね。家電量販店などで値引きを迫るとすぐに「それではポイントを多めに付与します」と店員さんが言うのには、こういう理由もあるのかもしれません。
企業の戦略を冷静に見極めよう
ポイントサービスを単なる「サービス」と捉えるのではなく、顧客を獲得するため、他にとられないために囲っておく戦略であると考えることができれば、より冷静に消費活動が行えるようになるかもしれません。
企業の行動には様々な理由があり、それらは一見分かりにくい面もあります。しかし今回のように、経済学の用語と絡めて考えることで、企業の真の狙いなどが分かる場合は数多くあるものです。
ポイントサービスやスタンプサービスなどを行っているお店に行った場合、ちょっとだけ今回ご紹介したお話しを思い出し、冷静に行動していただければと思います。