信用が高くてもモラルハザードは起こる?-物言う消費者の必要性

モラルハザード

投稿日: 2014年02月12日

最終更新日: 2017年02月07日

昔からあるお店や評判のいいお店

評判の高いお店や昔から営業していて風格の高い店でもモラルハザードの問題は起こってしまいます。

数年前、世間を驚かせたのは歴史も古く人気も高い食品会社の偽装(虚偽表示)事件でした。「まさか」と思った人も多く、その影響は大きなものでした。

普通、評判の高い店や歴史の古い店などは、その評判を維持しようと努めたり、店の名前に傷がつかないように経営しようとするはずです。

しかし、偽装事件は起こってしまいました。手作りと表示しているのに機械で製造していた、国産と表示しているのに外国産の原材料を使っていた、などといった事件は後を絶ちません。高価なエビを使っていると表示しているのに実は安価なエビを使っていた、という事件は、まだ記憶に新しいことと思います。

今回は、このような偽装事件とモラルハザードの関係について考えてみたいと思います。なぜお店は信頼を裏切るような行為をしてしまったのでしょうか。モラルハザードの考え方を応用すれば見えてきます。

信用が高いと誰も疑わなくなる

評判が高いお店のお客さんは、

「この店は信用できる」
「古くからあるから安心だ」
「店側だって信用を裏切るようなことはしないはずだ」

と、信頼しきっていることが多いです。リピーターであることも多く、その商品を長きにわたり愛用し続けています。従って、その商品を疑うこともせず、慎重に検品したりもしません。それを店側も十分よく分かって営業しています。

すると店側には

「安い材料でも誰もチェックしないからバレない」
「(手作りがウリだけど)機械で作った方が効率がいい」
「うちには信頼と実績があるから疑われる事はない」
「他の店でも当たり前に行われていることだ」

と考えるようになり、「観察されていないときにズルしても結果が同じであればズルしてしまおう」というモラルハザードが起こります。信用の高い店は「顧客が観察」することがないので、容易にズルできてしまいます。

確かに安い材料を使って誰にもバレずに済むのであれば、その方が収益は上がるでしょう。手作りするより機械で作った方が素早く作れるため売上を伸ばせるかもしれません。注意してあげる人がいないというのは、恐ろしい事です。

時には温かい厳しさも必要

このようなモラルハザードを未然に防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか。

もちろん偽装工作する企業が悪いのは明白な事実ですが、我々消費者にも責任があります。「信用が高い店だから」「老舗だから」という理由だけで店を信用しきってしまうのは、お互いにとって損であるということです。

老舗だからといって媚び諂う必要はないのです。ときには厳しい目でチェックし、何か問題がある場合は直接店にクレームをつけるという行為も、モラルハザードを防ぐ上で大切なことと考えられます。

definition
信用しきって店の言うことを鵜呑みにしてしまう消費者しかいなければ、店は観察されないためモラルハザードが起こってしまうことがある。
消費者が時に厳しい目で観察してあげることは、お互いにとってメリットを生む。

観察することの必要性

「誰かに見られている」「常に観察されている」と考えながら営業することで、緊張感がもたらされます。

いつでも誰かの目にさらされていると思えば、中途半端なズル賢い経営はできなくなるはずです。

誰だって、人の目に触れないところではズルしたくなってしまうものです。モラルハザードの教えはズルを肯定するものではありませんが、未然に防ぐためには観察するのが一番だということです。

definition
観察はモラルハザードを防ぐ上で極めて有効かつ重要な行為であると言える。

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