「めんどくさい」は贅沢か?-折りたたみ傘を持ち歩くか否か

目からウロコの経済学

投稿日: 2014年01月29日

最終更新日: 2017年02月07日

めんどくさがるのは悪いことか

先日、都内某所を歩いていたら、地下鉄の地上出口付近に、大量のビニール傘が捨てられていました。その数は1本や2本ではなく、軽く数十本は捨てられていました。

「もったいない」
「景観を乱す」
「社会的モラルの欠如だ」

などなど、様々なことを考えさせられる出来事でしたが、経済学的にはこれも取引コストの影響があると考えることができます。

今回は、この傘と取引コストについて考えてみたいと思います。傘を捨てるのはなぜだろう、なぜ持ち歩かずに使い捨てするのだろう、など、いろいろなことが見えてくるはずです。

急な雨で傘を買う

日本は雨の多い国ですから、突然の雨に見舞われることも少なくありません。朝の天気予報では雨の予報は出ていなかったのに、突然の雨が降るなんてことは、よくある話しです。

中には、そのような急な雨に具えて折りたたみ傘を常備している、クールな人もいますが、全ての人が当てはまるとは限りません。

急な雨の中、持っているタオルやカバンで頭を抑えて急ぎ足する人、コンビニで傘を買う人、カバンに入れてあった傘をさして雨をしのぐ人、雨宿りする人、タクシーを捕まえる人、などなど、人によって様々な対処法があります。

上の例の中で、金銭的な出費を伴うのが、「傘の購入」と「タクシーの利用」です。

それらを選択した人は、お金持ちなのでしょうか。それともただのめんどくさがりやなのでしょうか。

経済学では、急な雨に対処するために事前に準備しておく手間のことを「コスト」と呼んだりもします。

折りたたみ傘の持ち歩き理論

折りたたみ傘を持ち歩く人は用心深いだけではなく、傘を買ったりタクシーを利用したりするより、ちょっと重たいしかさばるけどカバンに傘を入れておいた方が手間が少ない、コストが少ないと考えていると言うことができます。

逆に、カバンが重くなったりかさばるものがカバンに入っている方が、傘代やタクシー代より高いコストだと考えている人は、常に折りたたみ傘を持ち歩くと言うことはしません。

もちろん、そのような人でも雨の確率が高い日や、家を出るときに既に雨が降っている日などは傘を持ち歩くでしょうが、それすらしない人もいます。

それは、贅沢とかめんどくさがりとかではなく、傘を持って家を出ることに対する手間(コスト)をどう考えているのか、という価値観の違いであると考えることもできます。

definition
折りたたみ傘を持ち歩くかどうかは、その人が持ち歩く事に対する手間をどのように考えているかできまる。

様々な局面で目にするシチュエーション

これは折りたたみ傘に限ったことではなく、あらゆる局面で同じように考えることができます。

例えば、自動販売機の観光地料金などもそうです。家から水筒を持って行けば安く済むのに、それを手間であると考える人は、現地で割高な飲み物を買う事になります。

家で水筒を用意し、それを目的地まで運ぶという作業の手間を、割高な飲み物との差額より高いと感じていると言う事になります。

このように、人が考える手間にフォーカスすると、不可解に思える人々の行動も、なんとなく理解することができるようになります。

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