コミュニティサイトでは出会えない?-逆選択の典型例

逆選択

投稿日: 2014年02月13日

最終更新日: 2017年02月07日

最初は素敵な出会いが目的だったはずが…

一世を風靡した出会いサイト。インターネットを利用して見知らぬ男女が出会う、素敵な空間。最初はなんの悪意もない、ただ純粋に男女が出会う場としてスタートしたはずです。

人見知りな人でもケータイでアクセスするだけで、顔を合わせることもなく異性とコミュニケーションが取れる、とても画期的な発明でした。

しかし、そんなコミュニケーションサイトを通じた事件も多く発生するようになり、詐欺まがいの行為も起こるようになってしまいました。

サクラとしか考えられないような会員も多く、情報には嘘が蔓延しているようにも感じられます。

最初は純粋な出会いの場であったコミュニケーションサイトですが、いつから、なぜ、このような状態になってしまったのでしょうか。今回は、その理由を突き止めるために出会いサイトと逆選択の関係について考えてみたいと思います。

コミュニティサイトの仕組み

コミュニティサイトでは、自分のことを他の人にアピールして気に入ってもらい、「自分に合いそうだな」と思ってもらえたら閲覧者から連絡が来るという仕組みが一般的です。いわば、自分自身のことを広告するというわけです。

典型的なコミュニティサイトのプロフィール欄には、以下のような物が記述されます。

自己紹介文
自分の写真
収入の水準
学歴
年齢
性別
身長
体重
血液型
好き嫌い

ごく一般的なプロフィールはこのような感じになっております。

この部分でインチキをすることに関しては「見えないところではやりたい放題?-コミュニティサイトのプロフィールと現実世界の乖離」という記事で以前ご紹介しましたので、併せてお読み頂けると様々なことが見えてくると思います。

これらの情報を記述することで自分自身の広告を作成し、気に入ってもらい連絡が来るのを待つ事になります。または、既に誰かが書いたプロフィールを閲覧し、気に入った人がいたらこちらから連絡をしてみる、ということもできます。

観察できないが故のモラルハザード

ここで、プロフィール記述(自分自身の広告作成)におけるモラルハザードが起こりえます。モラルハザードとは、観察できない場合に人はズルしてしまいやすいということですが、まさにプロフィールは誰にも観察できることではありません。

つまり、真実とかけ離れた内容を記述したとしても、誰にも観察されませんので自由に書けてしまうということです。身長や体重を多少偽っても、誰にも確認することはできませんし、学歴も同じです。

少し偽るだけで多くの人から連絡が来るようになるのであれば、(誰も確認していないし)インチキしてしまおうと考えてしまいがちです。

このようなモラルハザードが至る所で起こってしまうことにより、嘘偽りだらけの歪んだプロフィール集が出来上がってしまう訳です。

日本人の平均身長・平均体重

出所:wikipedia

出所:wikipedia

ちなみに身長や体重などは、全国平均が有り偏るはずはありません。上のグラフは正規分布表ですが、身長も体重もばらつきは全国平均を中心に、だいたい上記のグラフのように散らばっているはずです。

それなのに、コミュニティサイトのプロフィールを覗いてみると、男性の身長は圧倒的に全国平均を上回っていることが多く、女性の体重は圧倒的に全国平均を下回っていることが多いのです。

そこには「みんなが好みそうな身長や体重を記述すれば異性から連絡が来るかもしれない」というインセンティブが働いているものと考えられます。

運営者のインセンティブの変化

コミュニティサイトは一般的に無料で利用できる場合が多く、サイトの運営者は広告収入によって報酬を得ていることがほとんどです。

広告収入はアクセス数にほぼ比例しますから、サイト運営者からしたら多くの人に利用してもらうのが望ましいですよね。

実際にそのサイトを利用して何人が出会うことができたかなんて、それこそ観察することができませんから、サイトへの誘導としては使えそうにありません。

だとすれば、理想的な人が多数会員登録していることがアクセスアップにつながると考えるようになります。そう、サクラです。

顔も性格も体型も非の打ち所がないような人を多数用意し、連絡を取らせるのです。

いつしか運営者のインセンティブは、優良なコミュニティサイトを構築して男女を引き合わせることこそがコンテンツを充実させアクセスアップにつながる、という物から、サクラをたくさん用意すれば手っ取り早くアクセスが稼げるようになる、というものに変化してしまいました。

このやり方は、「プロフィールの閲覧は無料だが、連絡を取ることは有料」というサイトでも効果を発揮します。

そうしてインチキが多くなる

当初は純粋な出会いの場であったコミュニティサイトですが、上記のような理由により歪んだ物となってしまいました。

本当に出会いを求めている人が利用しようとしても、ウソばかり書いている会員が目立つために利用しなくなってしまいます。次第に本当の利用者は減り、インチキしている人ばかりが残ってしまう事になります。まさに逆選択が起こっている状況であると考えることができます。

definition
本来の利用者が招かれざる利用者のために駆逐されるのが逆選択。
せっかくの良品も粗悪品に駆逐されて市場から姿を消してしまう。
そのような市場はやがて衰退していってしまう。

最近では本当に純粋な場を提供しようとしているコミュニティサイトも散見されます。ですがまだまだ逆選択が働いているサイトも根強く残っている状況です。そのサイトは純粋な出会いの場として適切なのかどうか、利用者本人の目で見て確認し、判断するしかなさそうです。

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