人は自分の満足を瞬時に計算している?-インセンティブの種類と置き換え
投稿日: 2014年02月08日
最終更新日: 2017年02月07日
インセンティブには大まかに3つの種類がある
インセンティブには、経済的・社会的・道徳的といった種類があります。そもそもインセンティブとは、人を引きつける刺激という考え方ですが、人を動かすのに強力に作用します。
今回は、インセンティブの種類についてご紹介したのち、ある物事についてのインセンティブを人は瞬時に計算しているということ、またそれらのインセンティブが置き換わった時の人の行動について考えてみたいと思います。
インセンティブの種類
このセクションでは、3つのインセンティブについてご紹介しておきます。すべてプラス面とマイナス面があります。ある行動によりどのインセンティブに関連があるかはケースバイケースですが、3つともすべて関連する場合もあります。
経済的インセンティブ
お金の収入と支出です。一番数値化しやすく、しかも強力です。100円もらえるのと100万円もらえるのとでは、インセンティブの度合いがまるっきり違います。
インセンティブはもらえるだけが該当するのではなく、失うというインセンティブもあります。ある行動をとると100円失う、違う行動をとると100万円失う、といった考え方です。失う場合はマイナスのインセンティブと考えることもできます。
社会的インセンティブ
この場合のプラスのインセンティブとしては、社会的地位や名声、評判などが考えられます。人にうらやましがられる地位、名誉、いい評判が得られるという場合、プラスのインセンティブと考えることができます。
逆に、ある行動を取る(露見する)ことにより恥をかいたり、自分の地位を貶められてしまうような場合、その行動はマイナスのインセンティブとなってしまいます。
道徳的インセンティブ
この場合のプラスのインセンティブとしては、ある行動を取ることにより正義感を持つことができるということが挙げられます。
逆にマイナス面としては、ある行動により罪の意識を持ってしまうということです。
置き換えてしまうと人の行動は変わる
これらのインセンティブの考え方は、左記の書籍を参考に記述しておりますが、そこに面白い例が書かれていました。それが、インセンティブの置き換えによる人の行動の変化です。
罪の意識を持っているという状況の道徳的インセンティブがマイナスの場合、人は申し訳ないと思っていて、できればその行動をしたくないと思っているはずです。
しかし、その罪の意識が金銭的な出費に置き換えることができる場合、人から罪の意識は薄れ、金銭の出費を伴うことでその罪を正当化する傾向にあります。書籍では保育園のお迎えに遅れてくる親からお金を取るという実験が紹介されていましたが、似たようなことは現実の世界にたくさんあるはずです。
最初は罪の意識があり、できるだけ減らさなければという自制心があったのにも関わらず、そこに金銭の出費という罰則を設けてしまうと、人から罪の意識がなくなり、むしろ「金払ってるんだから良いじゃん」と考えてしまうことがあります。(マイナスの)道徳的インセンティブが(マイナスの)経済的インセンティブに置き換えられてしまうことがあるということです。
失うものと得られるもののトレードオフを、人は瞬時に(無意識に)計算しているのです。
大変難しい問題ですが、人のインセンティブはちょっとした変化で大きく、そして強く動く場合がありますので、細心の注意を払う必要があると考えられます。