電気屋の近くに電気屋は正解?-財布に優しい取引コストの法則
投稿日: 2014年02月03日
最終更新日: 2017年02月07日
近くに同じような店ありませんか?
電気屋さんの近くに電気屋さんがあったり、メガネ屋さんの近くにメガネ屋さんがあったり…
「既にそこには電気屋さんがあるんだから、もっと違う場所に建てれば良いのに」
なんて思ったこと、ありませんか?
みなさんの街にもこのような現象は少なからずあるはずです。ほんの数十メートルしか離れていない場所に、同じような店が何軒も建つ。これはなぜなのでしょうか。
今回は、近くなのに同じような店が何軒も建つ理由を、経済学的に考えてみたいと思います。そこには巧妙な企業戦略や、顧客重視の考え方が見て取れます。
近くに建つのには理由がある
もちろん、店は既存店に喧嘩をふっかけるためにわざと近くに建てている訳ではありません。それなりの理由があるから、近くに同じような店を建てているのです。
買い物をする側の立場からすると、近くに同じような店があると便利なことばかりなのです。
近くだと見て回るのに手間がかからない
例えば家具屋が近くに3軒建っていたとします。すると、自分の気に入るような家具を、至近距離で選ぶことができます。家具屋同士が遠く離れていると、そこまでいく手間がかかり、めんどくさくてなかなか足を伸ばそうという気にならず、1軒目で妥協してしまう事もあるかもしれません。
その点、近くに違う家具屋さんがある場合、手間をあまりかけずに見て回ることができるというメリットがあります。
値下げ競争が発生しやすい
店側も、近くに同様の店が建つとどうしても意識します。
「隣の店より売上を上げたい」
「隣の店に負けるわけにはいかない」
「隣の店より安くて良いものを提供したい」
と考えるようになります。すると、各店舗で値下げ競争が始まり、消費者にとっては嬉しい結果となります。
値下げを誘発する技が使える
例えば近くに3軒の家電量販店があるとしたら、その店のチラシを使って値下げを誘発させることができるかもしれません。
ABCという3つの家電量販店があったとして、A店に入る際にはB店のチラシをそっと携え、店員に見えるように持ちます。すると、B店の店員は
「このお客さんはA店の価格調査もしているな。このお客さんをA店に取られたくないから、A店より安い価格で売ろう!」
という気になるかもしれません。値切るのが恥ずかしいと思う人でも、チラシを携えるだけなら恥ずかしくありませんし、その効果はきっとあるはずです。
同様のことを他の店でもすれば、どの店が一番値引きしてくれるのかを見比べやすくなり、一番親切な価格を提示してくれたお店で買うということがやりやすくなります。
集客するためには顧客の取引コストを抑える
上記で他の店に行く手間や値下げについてご紹介しましたが、これらは全て取引コストであると考えることができます。
顧客は常に「商品価格+取引コスト」が最小になるように行動する傾向があり、店舗展開する企業もそれを分かっていますから、同様の店を既存店の近隣に建てようとするのです。
この場合考えられる取引コストは、家から店までいく手間、買った商品を家まで持ち帰る手間、店同士の価格調査をする手間、値引き交渉する手間、品揃えに関する情報収集などが考えられます。
街の中心部に集まりやすい仕組み
街の中心部というのは、相対的に「家から近い店」ということになります。
街のはじっこに店があると、その店の近くに住んでいる人は近くていいですが、街の反対側に住んでいる人にとってはとても遠い店になってしまいます。
その点、街の中心部に店を建てると、街のどこに住んでいる人から見ても、相対的に近い場所ということができます。