「もったいない」は損をする?-サンクコストの呪縛

サンクコスト

投稿日: 2014年02月01日

最終更新日: 2017年02月07日

「もったいない」は、日本人の美徳とされているが…?

日本人はよく「もったいない」という言葉を使い、実際モノを大切にする文化があります。古くなったものを捨てずに有効活用したり再利用したり。このような考え方は海外からも高い評価を受けています。

しかし今回は、「もったいない」と考えすぎることによって誤解したり判断を誤ってしまったりする危険性を指摘してみたいと思います。

一種の「割り切り」とも考えることができますが、その内容を理解することが大切です。投資判断をする際にも、とても役立つ考え方ですので、ぜひマスターしていただきたいと思います。

既に支払った費用を回収できない時は

回収することのできない費用を経済学では「サンクコスト」といいます。

人は一度支出するとどうしてもその支出を正当化したがるため、

「自分が行った支出は間違っていない」
「この支出により必ず効果が出るはずだ」
「効果が出ないなんておかしい!」

と考えてしまいがちです。その支出により得たモノに愛着に近いようなものを感じ、徹底的に(損のないように)活用しようとします。これが「もったいない」の考え方に近いですね。

しかし、投資してしばらく経ってから、「失敗だった」と感じることも多いはずです。それなのにその失敗を認めたくないため、その投資に固執し逃れられなくなります。これが、サンクコストの呪縛というものです。

definition
既に行った投資を正当化したいため、内心「間違いだった」と気付いているにも関わらず、その投資に固執し利用し続けることをサンクコストの呪縛という。
客観的に見ればそんなもの割り切れば良いのにと思うが、投資した本人にとっては大問題なので、なかなか逃れられない。

ホームページ制作に例えてみよう

例えば100万円かけて自社のホームページを外注し、専門業者に作ってもらったとしましょう。ホームページはその性質上、完成までに時間を要します。つまり、お金と時間を投資しないと完成させられないという事になります。

さて、ホームページの制作を依頼して2ヵ月経ち、やっと完成したとしましょう。出来映えはとても満足いくもので、これで顧客が増える事間違いなしと確信したとします。

しかししばらくして、出来上がったホームページに、決定的な欠陥が見付かりました。クーリングオフ期間は過ぎており、制作会社に返品もできないとします。初期の打ち合わせの段階でホームページ制作会社に伝えておかなければならなかったことを伝えておらず、それがホームページに反映されていなかったのです。従って、ホームページ制作会社の過失はゼロであるとします。

作り直すか否か?

幸運なことに、別のホームページ制作会社に問い合わせたら、新規でホームページを30万円で作ってもらえるとのこと。

しかし経営者は、

「もう既に100万円というお金を投資したので後戻りできない」
「2ヵ月もの時間を要して制作したので作り直すなんてことはできない」

と、サンクコストの呪縛に陥ってしまいがちです。最初に投資した100万円と2ヵ月の制作期間は回収不可能なのですから、この場合サンクコストとして諦め、忘れてしまった方が良いというのが経済学の教えです。

既にした支出にとらわれず冷静な判断を

上記の例のように、既に支出して回収することのできない出費や時間は戻ってきませんので、とらわれていると合理的な判断ができなくなってしまいます。

サンクコストを「もったいない」と考えず、回収できるのかできないのかに着目し、冷静な判断を心がけるようにしましょう。

definition
既にした支出に固執せず、「回収可能性」に着目する。
回収の見込がない場合、サンクコストなのでとらわれると合理的な判断ができなくなる恐れがある。

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