努力してもしなくても同じ結果なら努力しない?-モラルハザードの問題
投稿日: 2014年02月12日
最終更新日: 2017年02月07日
誰だってラクして生きたい
やってもやらなくても同じ結果なら、誰だってやらずにラクして結果を得たくなるものです。
仕事をしてもしなくても100万円もらえるなら仕事はしませんし、勉強してもしなくても大学に合格できるなら勉強しません。
努力に苦痛はつきものです。人は苦痛を嫌います。苦痛を伴わずに結果だけ得られるのであれば、人は苦痛を回避しようと考えるのは自然なことです。
このような現象をモラルハザードといいますが、今回はモラルハザードが引き起こす問題点やモラルハザードの考え方、これまで実際に起きたモラルハザードなどをご紹介してみたいと思います。
観察とモラルハザードの関係
管理者(プリンシパル)に監視されている状況下ではこのようなサボりはできないかもしれませんが、見られていない状況では可能な事もあります。見られていない隙にズルして結果を出したように見せかけて報酬を得ることが可能なら、人はズルすることに意識を集中させてしまいます。
しかし管理者は、いつでも観察できる訳ではありません。人がきちんと働いているのを観察できる時間があるなら、管理者は人を雇わずに自分でその作業を行いますからね。
国単位で起こる場合もある
社会主義の国では、人の努力いかんに関わらず、一定の生活水準が保障されています。
ということは、上記のように努力しないで一定の水準の生活を維持しようというインセンティブが働き、努力しない人が続出します。
国民全員がこのようなことを考えてしまうと、その国の力はどんどん弱まってしまい、やがて衰退します。
モラルハザードは国さえ滅ぼしてしまう恐ろしいパワーを秘めているのです。
救済措置によるインセンティブの入れ替わり
失敗しても保険がきいたり、なんらかの補償が約束されている場合、インセンティブの変化がもたらされます。
例えば倒産しても国が損失を補償してくれるという法律がある場合、とても危険な経営判断を下してしまうこともできます。その判断により大きな利益を上げることができれば経営者のフトコロは温まります。失敗しても国が助けてくれます。となると、失うものは少なく得るものは多いので、無茶な投資などに手を染めやすくなります。
国が「その企業がどのような経営をしているのか」ということを逐一観察することは難しいので、このようなモラルハザードが起こってしまうという訳です。
実際のところ、なんらかの救済措置が議論されている場合、このモラルハザードの問題を理由に(救済措置の)反対意見を出す専門家も多く、判断が難しいのが実情です。
ちなみに銀行のペイオフは、この節で紹介したような考え方から制定されたシステムです。銀行がいくらでも(青天井で)残高を補償してしまうと、それを悪用する輩がいる(実際にいました)ので、そのような行為を防ぐために制定されました。
モラルハザードは身近にも存在する
例えばアルバイト中、店長がいないスキにケータイで遊んでしまったり、テスト中に監督者の目を盗んで隣の人の答案を覗いたり、といった行為もモラルハザードであると考えることができます。
観察されていない状況でズルしたりサボったりしてしまう、というのはよくある話しですが防止するのはとても難しい問題なのです。
見られているところで頑張るのは当たり前で、見られていないところでの努力こそが大切なのである。