ドルペッグ制とは

用語集

投稿日: 2014年02月12日

最終更新日: 2017年02月07日

発展途上国が導入する手法

自分の国の貨幣価値をアメリカドルと連動させ、諸外国に「価値は下がりませんよ、乱高下しませんよ」とアピールするために用いられる手法。ドルと連動する固定相場制です。

ペッグとは打ち付ける杭のようなもので、自分の国の通貨が動かないようにドルに打ち付けていると考えるとイメージしやすいかもしれません。

発展途上国の場合、その国に対する不安があるため貨幣価値が安定しにくいという特徴がありますが、ドルペッグ制を導入することにより、海外の投資家たちに安心材料を与えることができます。

海外の資金を自国に引き入れやすくなる

発展途上国は自国通貨がそれほどたくさんないため、海外からの資金に頼らなければなりません。しかし、経済的に不安な国の貨幣は誰も欲しがりませんから、普通あまり投資されません。そこでドルペッグ制を導入することで、投資しやすい環境を整えることができると考えられます。

自国通貨とドルを固定させているとはいえ、金利はドルと同じではありません(基本的に発展途上国の金利は高い)から、ドルペッグ制を導入した国の通貨は人気になりやすくなります。つまり、ドルを売ってその国の通貨を持つだけで金利差が得られる上に、その国の通貨がドルペッグ制により下落する心配がないため、小さいリスクで稼ぐことができる可能性が高いということです。

自国の設備投資も伸びやすくなる

設備投資するには銀行からお金を借りる必要がありますが、発展途上国の通貨は金利が高いので普通ならなかなか借りる決断ができません。

しかし、ドルペッグ制のもとではドルを持っていても自国通貨を持っていても価値が固定されているので同じ価値だと考えることができます。とすると、まずドルを設備投資に必要な分だけ銀行から借り、そのドルを自国通貨に交換し、設備投資を行う、ということが可能となります。

発展途上国の通貨と比較するとアメリカドルは低金利ですので、比較的低い金利で設備投資を行うことができます。

アメリカの経済金融政策の影響をモロに受ける

ドルペッグ制にはデメリットもあり、典型的なものはアメリカの経済金融政策の影響を受けてしまうというものです。

ドルペッグ制はいわばアメリカに断りを入れずにその国で勝手にやっていることですから、アメリカには関係ありません。アメリカはドルペッグ制を導入している国のことなど考えずに自分の国のことだけを考えて政策を打ち出しますから、アメリカの新しい政策が必ずしもドルペッグ制導入国にとって有益だとは言えません。

アメリカがドル高政策を打ち出せば、ドルペッグ制導入国も不可避的に自国通貨高になってしまうという訳です。

プラザ合意によるドル安政策下ではドルペッグ制はうまく機能し、アジア経済を牽引していましたが、1995年にアメリカはドル高政策を打ち出し、ドルペッグ制導入国に大打撃を与えました。

definition
ドル高になると自国通貨も高くなるので、自国製品も割高になり輸出が減少してしまう。
輸出が減少して貿易赤字が進むとドルペッグ制が維持できなくなり、海外の投資家も不利益を被ってしまう。

ドルペッグ制が維持できなくなると資金が引き上げられてしまう

ドルペッグ制が崩壊すると、その国の通貨は一気に安くなりますから、その国に投資している投資家が損をします。

ですから、ドルペッグ制の維持にかげりが見えてきたら、投資家たちは一気にその国から資金を引き上げていきます。

資金を引き上げるということは、その国の貨幣を売ってドルなどを買い戻すということです。

その国の通貨が大量に売られるということは、その国の通貨がさらに安くなってしまうということを意味します。

このような現象がアジアの複数の新興市場国で起こり、アジア通貨危機となってしまいました。

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